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きょうにつけるゆうべ

京に着ける夕

夏目 漱石

从热烘烘的东京跳上火车,一下子被甩进京都的春寒黑夜。坐在四面透风的车里晃悠,冷得直哆嗦——这古都怎么冷成这样?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,009 字 · 8 页

青空文庫

後なる主人も言葉をかける気色がない。車夫はただ細長い通りをどこまでもかんかららんと北へ走る。なるほど遠い。遠いほど風に当らねばならぬ。馳けるほど顫えねばならぬ。余の膝掛と洋傘とは余が汽車から振り落されたとき居士が拾ってしまった。洋傘は拾われても雨が降らねばいらぬ。この寒いのに膝掛を拾われては東京を出るとき二十二円五十銭を奮発した甲斐がない。

子規と来たときはかように寒くはなかった。子規はセル、余はフランネルの制服を着て得意に人通りの多い所を歩行いた事を記憶している。その時子規はどこからか夏蜜柑を買うて来て、これを一つ食えと云って余に渡した。余は夏蜜柑の皮を剥いて、一房ごとに裂いては噛み、裂いては噛んで、あてどもなくさまようていると、いつの間にやら幅一間ぐらいの小路に出た。この小路の左右に並ぶ家には門並方一尺ばかりの穴を戸にあけてある。そうしてその穴の中から、もしもしと云う声がする。始めは偶然だと思うていたが行くほどに、穴のあるほどに、申し合せたように、左右の穴からもしもしと云う。知らぬ顔をして行き過ぎると穴から手を出して捕まえそうに烈しい呼び方をする。