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ひとのことば――じぶんのことば

人の言葉――自分の言葉

寺田 寅彦

「理学部会誌」1927(昭和2)年12月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,247 字 · 5 页

青空文庫

京にいでて一風の画を描出す。唐画にもあらず。和風にもあらず。自己の工夫にて。新裳を出しければ。京じゅう妙手として。皆まねをして。はなはだ流行せり。今に至りてはそれも見あきてすたりぬ。また江戸は奥州のかたへ属して。気質も京人のようにはなし。唐画にも。和画にも似ぬ風はのみ込まぬ事にて。わが自身工夫したりと言いては。それは法がないと言いて。請け取らず。しかれども。画はその物の形を見て。その形に似るをよしとす。法手本とするところは。すなわちその物なりと心得たる者も無きにもあらず。……」(司馬江漢、『春波楼筆記』)

科学界にも京人と奥州人がある。ロマンチシズムとクラシシズムの両極の間に世界が回転する。

五

「物理学はエキザクトサイエンスである。」この言葉ほどひどく誤解されてそしてそのおかげでエキザクトな物理学の進歩を阻害している言葉はない。

「量的に」この言葉も同様である。

六

「中等教科書に現われた物理ほど非物理的な物理はない」こんなパラドクシカルな事もある意味では言えない事はない。なんとならば、ほんとうはよくわからない事がちゃんとわかっているかのように読まれうるから。