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じんせいみっつのたのしみ
人生三つの愉しみ
「新潮 第四八巻第四号」1951(昭和26)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,953 字 · 16 页
ところが酒の味が鼻についてイヤでたまらないから、いつも酒の品目を変えて鼻につかない工夫をしてもダメ。ついには酒席を変え、方々へとびだしてのむ。すると時には案外気持よく酔うこともあるし、益々酔えないこともあるし、とにかく外でのむとムリをするから、胃弱を急速にひどくして、朝食べた物が十二時間経過した夜分になってもソックリ胃の中にあり、吐くとそのまま出てくる。しかも尚のむのである。これでも、酒で眠れればよろしいのだ。酒というものは、催眠薬にくらべれば、どれくらい健康だか分らない。
私の場合はアンタブスを飲まずに、常に同じ薬効を経験しつつあるようなものだ。私にとって必要なのはアンタブスの逆のもの、酒がおいしく飲めて、早く気持よく酔える薬である。
酒というものが人生に害があるとは私には考えられないのである。ただ、亭主が酒をのむために生活費にも事欠くというような例は多いかも知れない。しかし、それが酒だけの罪であるか、どうか、これは一考すべきことではなかろうか。万人が晩酌ぐらいできる生活はそれを当然の生活水準と考えるべきではないだろうか。収入に比して酒代が高価だというのは、飲みたい人の罪だけではないだろう。