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じんせいみっつのたのしみ

人生三つの愉しみ

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第四号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,953 字 · 16 页

青空文庫

その快楽が近年の私には最も愛すべき友である。眠るべからざる時に限って、実に否応なく、切実のギリギリというような眠りがとれて、眠りの空虚なものがどこにも感じられないのである。天来の妙味という感じである。子供のころ、試験勉強などの最中にも、同じような眠りはあった。しかし子供のころは、そんな眠りの快楽よりも、ほかの生き生きとした遊びの快楽の方がより親しくて、眠りなどにはなじめない。それが当然なのかも知れない。こんな眠りが何より親しい友だというのは賀すべきことではないようだ。そのバカらしさを痛感することもあるのだ。

酒池肉林というような生活に堪えられる人はいないであろう。ネロが時に詩人によって愛されるのは、その裏側にある陰気な満たされない魂のせいだ。日本でやや似た暴君は秀次である。彼の生涯には明るさなどは殆どない。飲めば飲むほど陰欝になり、日々怒りと悔恨がこみあげるだけの一生であったようだ。

酒池肉林という生活には、酒と女のほかに、入浴が一つ加わっているのが普通のようだ。そのやや一般化された代表的なのがローマ風呂なるもので、ローマは風呂によって亡びたとも云う。