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じんせいろんノート

人生論ノート

三木 清

下記以外「文學界」文藝春秋社、1938(昭和13)年6月~1941(昭和16)年10月<br>個性について「哲學研究 第五十二號 第五卷 第七册」京都哲學會、寶文館、1920(大正9)年7月1日<br>後記「人生論ノート」創元社、1941(昭和16)年8月11日<br>旅について 不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 页

青空文庫

個性の唯一性はそれが独立な存在として「他の何物の出入すべき窓を有せず」、自足的な内面的発展を遂げるところに成立するのであって、個性は自己活動的なものである故に自己区別的なものとして自己の唯一性を主張し得るのである。もとより私が世界過程の如何なる時に生を享けるかということは、恰も音楽の一つの曲の如何なる瞬間に或る音が来るかということが偶然でないように、偶然ではないであろう。それは私という個性の内面的な意味の関係に依って決定されることである。しかし私は時間の形式によって音楽を理解するのでなく、むしろ音楽において真の時間そのものを体験するのである。「自然を理解しようとする者は自然の如く黙してこれを理解しなければならぬ」といわれたように、個性を理解しようと欲する者は時の流のざわめきを超越しなければならない。彼は能弁を捕えてその頸を捻じなければならない。けれども私が時の流を離脱するのは時の経過の考え尽すことができぬ遥かの後においてではなく、私が流れる時の中に自己を浸して真に時そのものになったときである。単なる認識の形式としての時間から解放されて、純粋持続に自由に身を委せたときである。