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じんぞうにんげんじけん
人造人間事件
海野 十三
「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,654 字 · 30 页
その夫人が、今家に居ないし、警察へ届出もしないというのはどうもおかしい」
と検事は首を傾げた。帆村はそれを聞いていて、なるほどさっきのあれがそうだなと肯いた。
「もう一人、この家によく出入りしている人物が居るのです。それは戸口調査で分っているのですが、馬詰丈太郎といって、博士の甥に当る男です。彼は一ヶ月前まではこの家の中に同居していたんだが、今は出て五反田附近のアパートに住んでいます」
「その甥の馬詰というのにもなにか嫌疑を懸けることがあるのかネ」と検事はたずねた。
「彼は亡った博士の助手をして、永くこの部屋に働いていたのです。しかしどっちかというと、彼は怠け者で、いつも博士からこっぴどく叱られていたということです。これもばあやのお峰の話なんですがネ。そして彼が博士の家を出るようになった訳は、どうもウララ夫人によこしまな恋慕をしたためだという話です」
「なるほど、そいつは容疑者のうちに加えておいていいネ」
そういっているところへ、階下から一名の警官がアタフタと上ってきた。そして一同の前にキチンと姿勢を正して披露した。
「只今、馬詰丈太郎が門前を徘徊して居りましたので、引捕えてございます」