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じんぞうにんげんじけん

人造人間事件

海野 十三

「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,654 字 · 30 页

青空文庫

「ほう、君はまだ非番にならないかネ」

と、帆村は昨夜から顔を見せている警官に云った。

「駄目なんですよ。私が最初にここへ来たものですから、現場を動けないことになっています。もっともときどき交代で、下へ行って寝て来ますがネ。お得意の手で早く犯人を決めて下さいよ、ねえ帆村さん」

「ウフ、そのお得意のお呪いをするために、こうしてやって来たわけなんだよ。だが、どうも人殺しのあった部屋というのは、急に陰気に見えていけないネ。なんとこれは……」

といっているとき、――そのときだった。突然大きな声が、部屋中に鳴りひびいた。

「ええ、後場の市況でございます。新鐘……」と、細い数字が高らかに読みあげられていった。それはラジオの経済市況に外ならなかった。

「――君、ラジオの経済市況なんかで、寂しいのを紛らしているのかネ」

警官はムッとした顔つきで、

「じょ、冗談じゃありませんよ、帆村さん。経済市況で亡霊を払いのけることができるものですか。このラジオは勝手に鳴っているんです。とても騒々しいので、私はむしろ停めたいのですけれど、課長からすべて現状維持とし、何ものにも手をつけるなというので、その儘にしてあるんですよ」