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じんぞうにんげんじけん
人造人間事件
海野 十三
「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,654 字 · 30 页
「えッ、現状維持を――するとラジオは昨夜から懸けっ放しになっていたのか。しかし変だなア、昨夜ここへ来たときは、ラジオは鳴っていなかったが……」
「それはそうですよ。貴方がたのお見えになったのは、もう十時ちかくでしたものネ。ミナサン、ゴキゲンヨクオヤスミナサイマセを云ったあとですよ。私は今朝睡いところを、午前六時のラジオ体操に起され、それからこっちずうっとラジオのドラ声に悩まされているのですよ。御親切があるのなら、課長に電話をかけて下すって、ラジオのスイッチをひねることを許してもらって下さいよ」
「そうか。そいつは素敵な考えだッ」
「ええ、スイッチをひねることが、どうしてそんなに素敵だというんですか」
と警官は愕きの目を瞠った。
帆村はそれには答えず、帽子をつかむと、その部屋を飛びだした。警官は後を見送り、
「ああ帆村さんもいい人なんだが、どうもちとここのところへ来ているようだよ。可哀想に」
と、耳の上を人指し指で抑えた。
それから十五分ほど経った。
博士邸の門前は、にわかに騒がしくなった。警官が硝子窓から下を覗いてみると、雁金検事や大江山捜査課長などのお歴々がゾロゾロ自動車から降りてくるところが見えた。