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じんぞうにんげんじけん
人造人間事件
海野 十三
「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,654 字 · 30 页
と声をおとした。
ジョンと呼ばれる外人は、ずり落ちそうになった折鞄を抱えなおした。
「ウララさん。もしやあの人は、何者かに殺されたのではないのですか」
「まあ……」と女は愕いて「もちろん殺されたに違いありませんわ。あたし、これからどうしましょう」
ジョンは黙って立っていた。
ウララは苛々した様子で彼の腕に手をかけ、
「ねえジョン。あたしはもう決心しているのよ。こうなっては仕方がないわ。さあ、これからすぐに、あたしを連れて逃げて下さい」
といって、彼の腕を揺すぶった。
ジョンは、またずり落ちそうになった鞄を抱えなおしてから、ウララの肩に手をかけ、
「ウララ、お聞きなさい。逃げることは、もっと後にしても遅くはありません。それよりも、あなたの家に行ってみましょう。死体の始末がうまく出来ればいいでしょう。さあ、急ぎましょう」
二人が玄関から出てくる気配なので、柱の蔭に隠れていた帆村はハッと愕いた。咄嗟に彼は、壁にピタリと身体を密着させた。二人はついにそれには気づかず、スタスタと雨の中に急ぎ足に出ていった。
それと入れ違いに、受付の窓が開いて、看護婦が顔を出した。