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じんぞうにんげんじけん

人造人間事件

海野 十三

「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,654 字 · 30 页

青空文庫

「アーラ、やっぱり誰も居やしないわ。だから、あたしはベルなんか鳴りやしないと云ったのに」

2

帆村は雨に濡れてゆく背丈のたいへん違った男女の後を巧みに追っていった。二人は濠端へ出たが、自動車にも会わず、そのままドンドン向うへ歩いていった。そして新富橋の上にさしかかったとき、女はハッとした様子で立ち停った。

女は向うを指した。

「アラ、窓に灯がついているわ。誰もいない筈なのに」

橋を越えて、濠添いに右へ取っていったところに、人造人間の研究で知られた竹田博士研究所が聳えている。女は明らかにその家の窓を指しているのだった。

二人は急ぎ足となった。そして一度追い越した帆村を、また追い越しかえして、濠端を駛った。

門前ちかくにまで進んだ二人だったけれど、何を見たのか俄かに急いで引返してきた。帆村は面喰った。しかし本当に面喰ったのは二人の方らしかった。男は女を後にかばってツと濠端に身を引いた。外人の大きな挙が長いズボンの蔭にブルブルと呻っているのが判った。帆村はジロリと一瞥したまま、平然と二人の前を通りすぎた。彼は後の方で、深い二つの吐息のするのを聞いた。