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にんげんとゆわかし
人間と湯沸かし
小川 未明
「婦人倶楽部」1927(昭和2)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,082 字 · 7 页
直しにやってもだめだろうから、新しく買ったがいい。それは捨てておしまい。」
といわれました。
お竹は、湯沸かしを持って、勝手もとへもどりました。だんなさまのいわれたように、いよいよこの湯沸かしを捨てなければならぬのかと思った。
彼女は、これまで、どれほど、この湯沸かしが役にたったかを考えました。また、自分がこの湯沸かしの熱くしてくれた湯で、痛むほど冷たい手をあたためたことなどを思い出しました。
「いろいろ、この湯沸かしの世話になったわ。」
と、彼女は、ひとり言をしながら、じっと、もはや傷ついて役にたたなくなった湯沸かしをながめていたのであります。
その日の晩方、奥さまは、町から、新しいぴかぴかした湯沸かしを買ってこられました。
「お竹や、大事におつかいなさい。」
といわれて、手に渡されました。
お竹は、穴のあいた、黒くすすけた湯沸かしを見て、かつて、これもこんなに、新しくてぴかぴか光っているときが、あったのだろうと考えたのでした。
「お竹や、古い湯沸かしは、もう役にたたないのだから、捨てておしまいなさい。」
と、あくる日奥さまに注意されたので、いよいよ、もう、この湯沸かしともお別れだと思って、それを持って、ごみ箱のところへまいりました。