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にんげんかい

人間灰

海野 十三

「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,345 字 · 33 页

青空文庫

(もう一つの誤算は……)と例の声は云ったが、そのとき思いがけない「呀ッ」という叫び声が聞えた。(……こりゃ可笑しい。こんなところに変なものが……)とまでは聞えたが、そのあとはガチャリという音を残して、何も聞えなくなってしまった。

田熊社長は、惜しいところで盗聴器が聞えなくなったので、顔を真赤にして口惜がった。すぐさま、再び工夫を呼んで直させたが、五分ばかりして彼等は、恐る恐る社長の前へ罷りでて、云ったことである。

「社長さん、もういけません。向うの方で秘密送話器を切ってしまいました。この方法じゃ盗み聴きはもう駄目です」

社長は万事を悟って、苦が笑いをした。

「じゃこれから、空気工場へ出かける」

道々田熊社長は腕組をしながら、あの盗聴から得たさまざまの興味ある疑問について考えた。

「丘署長と、話をしていたのは一体誰だろう。大分腕利きらしいが、あんな男がK署に居たかしら?」

どう考えても、そんな気の利いた人物は考え出せなかった。その疑問は預かりとしておいて外にも疑問の種があった。

「話によると、どうやら犠牲者の屍体を粉々に砕いて、気球の上から撒くいう仮定を考えているようじゃったが、一体そんなことは出来るのかしら?」