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ものをこわすのがしょうばいじけん

什器破壊業事件

海野 十三

「大洋」1939(昭和14)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页

青空文庫

「こら、大木屋。こんどだけは特に大目に見てやるが、この次から容赦せんぞ。この次は絶対出入差止めだ。特にこんどだけは――おい、なにをぐずぐずしとる。早くその――ええソノ阿魔っ児を上へあげろちゅうに」

旦那様は、たいへんな騒ぎ方であった。

帆村は、わざとなんにもこの旦那様について説明をしなかったが、玄関の段でもって、この旦那様のこれまでの半生がはっきり分ったような気がした。なにかぼろい大仕事をして成上った人物で、教育なんぞはないくせに、尖端的文化の乱食者であることが、絵に描いてあるように、光枝にははっきり見えるのだった。

そこで光枝は、早速その夜から、旦那様づきの小間使として、まめまめしく仕えることとなった。

「ふふふん」ときおり光枝のうしろで、そういう咳ばらいとも呻り声ともつかないものが聞えた。そのようなとき、光枝がふりかえってみると、必ずそこに旦那様のきらきらした眼があって、とたんに旦那様は犬にとびこまれた鶏のようにばたばたと狼狽なされるのであった。

旦那様は、非常に無口の方であった。但しこれはあたらしい小間使の光枝に対してだけの話で、その他のお手伝いさんや使用人は、方言まじりの言葉で、こっぴどく叱りつけられていた。