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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

と、つづいて叫んだのは主税であった。

その前で藤八猿は独楽を持ったまま、綺麗に飜斗を切って見せた。

「捕らえろ! 捕らえて淀屋の独楽を!」

二人が藤八猿を追っかけると、猿は驚いて門口の方へ逃げた。それを追って門口まで走った……

と、土間の宵闇の中に、女猿廻しが静かに立っていた。

「ま、やっぱりあやめお姉様!」

「お前は妹! まアお葉かえ!」

この頃勘兵衛は野の道を、荏原屋敷の方へ走っていた。懐中をしっかり抑えている。主税とあやめとが猿を追って、土間の方へ走って行った隙を狙い、奪い取った第一の淀屋の独楽が、懐中の中にあるのであった。

(こいつを頼母様へ献上してみろ、俺、どんなに褒められるかしれねえ。……それにしてもあやめと主税とが、あんな所に住んでいようとは。……頼母様にお勧めして、今夜にも捕らえて処刑してやらなけりゃア。……)

飛加藤の亜流という老人も、それにたかっていた人々も、とうに散って誰もいない野の道を、小鬼のように走りながら、そんなことを思っているのであった。

空には星がちらばってい、荏原屋敷を囲んでいる森が、遥かの行手に黒く見えていた。

やがてこの夜も更けて真夜中となった。