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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页
そういう林であり藪地なのであった。
と、その林の奥の方から、キ――ッという猿の啼声が、物悲しそうに聞こえてきた。
(おや)と主税は足を止めた。
(いかに藪地であろうとも、猿など住んでいるはずはない。……では話の猿廻しが?)
そこで主税は堰を飛び越え、御用地の奥の方へ分け入った。草の露が足をぬらし、木の枝が顔を払ったりした。
また猿の啼声が聞こえてきた。
で、主税は突き進んだ。
すると、果たして一人の猿廻しが、猿を膝の上へ抱き上げて、祠の裾の辺りへうずくまり、編笠をかむった顔を俯向けて、木洩れの月光に肩の辺りを明るめ、寂しそうにしているのが見えた。
「猿廻し!」と声をかけ、突然主税はその前へ立った。
「用がある、拙者と一緒に参れ!」
「あッ」と猿廻しは飛び上ったが、木の間をくぐって逃げようとした。
「待て!」
主税は足を飛ばせ、素早くその前へ走って行き、左右に両手を開いて叫んだ。
「逃げようとて逃がしはせぬ、無理に逃げればぶった斬るぞ!」
「…………」
しかし無言で猿廻しは、両手で猿を頭上に捧げたが、バッとばかりに投げつけた。
キ――ッと猿は宙で啼き、主税の顔へ飛びついて来た。