轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いまどしんじゅう

今戸心中

広津 柳浪

「文芸倶楽部」1896(明治29)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,688 字 · 74 页

青空文庫

「えッ」と、吉里はびッくりして、「え。なぜ。どうなすッたの」と、西宮の顔を見つめて呆れている。

「いや、なぜということもない。辛いのは誰しも同一だ。お前さんと平田の苦衷を察しると、私一人どうして来られるものか」

「なぜそんなことをお言なさるの。私ゃそんなつもりで」

「そりゃわかッてる。それで来る来ないと言うわけじゃない。実に忍びないからだ」

「いや、いや、私ゃ否ですよ。私が小万さんに済みません。平田さんには別れなければならないし、兄さんでも来て下さらなきゃ、私ゃどうします。私が悪るかッたら謝罪るから、兄さん今まで通り来て下さいよ。私を可哀そうだと思ッて来て下さいよ。え、よござんすか。え、え」と、吉里は詫びるように頼むように幾たびとなく繰り返す。

西宮はうつむいて眼を閉ッて、じッと考えている。

吉里はその顔を覗き込んで、「よござんすか。ねえ兄さん、よござんすか。私ゃ兄さんでも来て下さらなきゃア……」と、また泣き声になッて、「え、よござんすか」

西宮は閉目てうつむいている。

「よござんすね、よござんすね。本統、本統」と、吉里は幾たびとなく念を押して西宮をうなずかせ、はアッと深く息を吐いて涙を拭きながら、「兄さんでも来て下さらなきゃア、私ゃ生きちゃアいませんよ」