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こんにちのぶんがくのちょうかんず
今日の文学の鳥瞰図
宮本 百合子
「唯物論研究」1937(昭和12)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,298 字 · 24 页
としつつ、パン種の入っていないパンをふくらがそうと焦慮するに等しい本来的な無理があった。従って作品の実際に当っては、最も手近なかつ日常的な恋愛の推移の過程を、些かは感傷ぬきに雄々しく描こうとする努力、又は俗世間の利害の焦点の推移によって権力も推移する浮世の姿を描くという試みの限度に置かれたのであるが、この能動精神の主観的理解には、例えば肉体の慾望と精神の能動性とが現実の中で対立するもののような、精神が能動を欲することから、肉体の慾望にも従うというような観念的な観方も作品に反映しているのであった。イギリスの作家D・H・ローレンスの作品の紹介等もなされた。しかし、それはイギリスという国情、キリスト教の伝統、及ヨーロッパ戦争という諸条件の後に炭坑夫の息子ローレンスを生んだのであって、日本の自由主義と民主主義とを知らず、又一方に於てキリスト教の女性崇拝の伝統をも持たない社会の現実の中では、生活的にも文学的にも生新なものを生むことは不可能であった。
一九三五年以降のフランスの社会的事情の変遷、人民戦線の拡大等は、文化の上にヒューマニズムの提唱をもたらした。