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こんにちのぶんがくのちょうかんず

今日の文学の鳥瞰図

宮本 百合子

「唯物論研究」1937(昭和12)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,298 字 · 24 页

青空文庫

この対策として、作家が文学青年を目あてにして書いたような過去の「私小説」をやめ、大いに社会性のある、大衆にとっても面白い小説を書かねばならないという意見が出されている。林房雄氏はその具体案として「大人の文学」を提案し、真面目な作家は現代の官吏、軍人、実業家の中心問題とするところを文壇の中心問題として、二年でも三年でも根気よくそれを繰り返すべきであると言っているのである。

評論家谷川徹三氏は、現代の日本では大衆の持っている文化水準と一部の作家が持っている文化水準とはひどく懸隔している。そこに文学が大衆の生活との繋りを失う原因があるのであるから、新しい文学の方向としては、この両者の距離を埋めるような均衡を見出してゆくようなものが求められると言っている。

作家武田麟太郎氏は、日本文学の庶民性を主張しつつある作家である。日本の文学は庶民の生活の中から生れたものであるとし、現代作家の任務は現代の庶民の生活にとけ込んでその朝夕のいとなみとその涙と笑いとをあるがままに描き徹することに於て庶民の生きるべき方向と道とが自ら示されるという見解である。『人民文庫』の人々の作品に共通な風俗描写の根柢にはこういう大衆というものの見方が横わっている次第である。