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イタリアのことう
伊太利亜の古陶
宮本 百合子
「中央公論」1924(大正13)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,477 字 · 31 页
勢、会話は陶器と無関係な方向に流れた。彼女等はぽつぽつ近頃流行の婦人の水泳、乗馬、舞踏などの話をした。何を話し出しても夫人は、
「私共のようになりましてはねえ」
と微に眉を顰めるばかりである。到底全心を打ちこめない弱々しい殆ど退屈な会話の傍ら、みや子の注意は卓子の前にいる良人と子爵とに向けられた。二人の前には珍しい深紅色に光る皿が一枚出ている。みや子は、うっかり黙り込んだ自分を見出し、元気をとりなおして新たに話の緒を見出した。彼女は気候の話から、子爵夫人に旅行をすすめた。
「これから関西はさぞよろしゅうございましょうね。晨子さまの御仕度かたがたお揃いで京、大阪にお出かけ遊しませ。――よいお思い出でございましょう」
「それほどに致しませんでも、これで暫くところが変りますとね。当分はそれどころでもござりますまいが。――けれど、あいにくこれといって手頃な別荘もございませず……」
みや子は訝しげに夫人を顧みた。
「沼津の御別荘は――お手入れでいらっしゃいますか?」
「ああ、あれはもう昨年から参りませんのですよ。追々手離す所存でございましょう。小田原に小さい家がございますが、これはまた昨年の地震で滅茶になりましてね」