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ならわざるをつたうるか
伝不習乎
北大路 魯山人
「星岡」1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,662 字 · 10 页
僕の思うのに、○氏はなるほどなかなかの食通で、うまい料理は食って知っている。だから食わせればうまい料理か、まずい料理かは分るに違いない。しかし、そこに並べてあった魚も、あの人が目をとおしたに違いないが、魚のよしあしは残念ながら分らない。おそらく、それでよいと思ったか、少なくとも、それでも料理人の腕次第で、これで立派な料理が出来るものと考えたか、いずれかに違いない。
しかも、開業日に並べたててみせる魚がこれだから、それで僕にはこれはいけないと思われた。案の定、料理は食われたものではなかった。
料理はその意味で、なんといっても材料が第一である。材料がよければ料理人の腕が少々鈍くとも甘ければ甘いなりに、辛ければ辛いなりに出来る。
しかし、これを食うひとの方からいえば、まず料理人がどうだこうだという話で、そんなことに騙されて、これはうまいだろうと考えるのが、いわば軽薄であるというより他はない。どこにいようと、だめなものはだめである。
*
料理界を見渡して、紳士と呼ばるべきものが、料理屋の主人にもせよ、職人にもせよ、一人もいないということは、今日の料理がどんなものであるかということを、もっとも雄弁に物語る。