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えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

「週刊朝日涼風読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 页

青空文庫

弥市ははだしの足でひとはねはねた。

「ここの杢助はもう白髪の爺さまだっつうに、おめえら毎日なんの用があって来るだ」

「おんだらは来る用があるだよ」

娘たちはこう云いながら近づいて来た。五人とも包みや手籠を持って、弥市などはてんで舐めたようすだった。

「おめえこそ用はなかんべえによ」

娘たちは弥市を嘲弄した。

「おめえはただむだ話しをするか、はねてみせるほかに能はねえだ、そのうす汚ねえ恰好でよ、杢助さまの邪魔をするほかに能はねえだに、おんだらは掃除もするし洗濯もするし、煮炊きのお世話もするだ、誰かがしねえばなんねえだでしに来るだわさ」

「このあまっ子ども、ばあさまらとおんなしだ」

弥市は拳をつき出して叫んだ。

「おめえらのばあさまも、こんなふうに杢助につきまとって、しんから杢助をうんざりさせただ、杢助はこんな爺さまになって帰って来ただに、おめえらはまたうるさくつきまとって杢助をうんざりさせる気だつうのか」

「そんなこと心配しねえで、おめえは三つ沢の湯小屋の番でもするがいいだ」

娘たちはずけずけと云った。

「杢助さまがうんざりするかしねえかは杢助さまが知ってござるわさ」