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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
「週刊朝日涼風読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 页
杢助は村へ帰った。二駄の(加賀侯から賜わった)土産を持ち、輿で送られた杢助は、牛窪村の人たちの熱狂的な歓迎を受け、黒門に十日ほど滞在したのち、杉谷の草庵へ帰った。そこでは三之木三郎が去って、新たに五人の修業者が来ていた。……三之木三郎は榧の枝からぶら下げたあの木剣を、ひき千切って、踏み折って、それに唾を吐きかけて、悪態をついてたち去ったということであった。
「早くそうすればよかったによ」
杢助は云った。
「あの役立たずが、もっと早くそうすればよかっただに、それがお互えのためだったによ、……まあいいだ、穀潰しが減ったでな、さばさばしただよ」
草庵の安穏な生活は保証されたようであった。一之木太郎と、新たに来た六之木六郎から十之木十郎までの、六人の修業者たちを眺めながら、杢助はのびのびと横になり、ながく飢えていた煙草を取って、さも満足そうにふかし始めた。
「お煙草が残り少なになりました」
と一之木太郎が云った。
「大阪へでもまいったら求められるのでしょうが、よろしかったら雪のこないうちに、私どものうち誰かいって来ることに致しましょう」
「心配はいらねえだよ」
杢助が云った。