轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

なにもの

何者

江戸川 乱歩

「時事新報 夕刊」時事新報社、1929(昭和4)年11月28日~12月29日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,449 字 · 77 页

青空文庫

とすると、甲田君がピストルの音に驚いたのも本当らしい。つまり彼がそれを発射したのではないことになります」

「何の為めに日記帳を読んでいたと云うのでしょう」

「オヤ、あなたは分りませんか。彼は恋人の志摩子さんの本当の心を判じ兼たのです。日記帳を見たら、若しやそれが分りはしないかと思ったのです。可哀相な甲田君が、どんなにイライラしていたかが分るではありませんか」

「で、予審判事はその申立を信じたのでしょうか」

「イヤ、信じなかったのです。あなたもおっしゃる通り、甲田君に不利な証拠が揃い過ぎていますからね」

「そうでしょうとも。そんな薄弱な申立てが何になるものですか」

「ところが、僕は、甲田君に不利な証拠が揃っている反面には、有利な証拠もいくらかある様な気がするのです。第一に、あなたを殺すのが目的なら、なぜ生死を確めもしないで人を呼んだかという点です。いくら慌てていたからと云って、一方では、前もって偽の足跡をつけて置いたりした周到さに比べて、あんまり辻褄が合わないじゃありませんか。第二には、偽の足跡をつける場合、往復の逆であることを看破されないために、足跡の重なることを避けた程綿密な彼が、自分の足癖をそのまま、内輪につけて置いたというのも信じ難いことです」