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さくひんのけつみゃく

作品の血脈

宮本 百合子

「中央公論」1939(昭和14)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,728 字 · 6 页

青空文庫

ふだん近くにいない人々にとって、岡本かの子さんの訃報はまことに突然であった。その朝新聞をひろげたら、かの子さんの見紛うことのない写真が目に入り、私はその刹那何かの事故で怪我でもされたかと感じた。そしたら、それは訃報であって、五日も前のことであった。一種流れ掠めて行くものを感じた。五日も前。――

初めてかの子さんに会ったのは、昔、或る会の折であった。その会には女が二人しかいず、その一人はかの子さん、一人は二十一ぐらいの私であった。従って、はじめから終りまで一緒に並んでいて、食卓に向ったときも隣りあわせた。料理に何か串焼のようなものが出たら、かの子さんがいかにも食べにくそうに、どうしてたべるのかしらと眺めていられるので、私がその串をぬいてあげたことがあった。

和歌の話が出て、私は何も知らず、そういう伝統も持たないが、「金槐集」はすこし読んだことがあって好きと思ったというようなことを云った。歌集をおくられたのは、それからどの位の時が経っていただろう。

その歌集を貰った時分、私は青山に住んでいて、生活のうちに落付けず、輾転反側していた時代であった。歌集を読んで、どんなことを云ったか手紙をかいた。