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さっかとしてのこさかいはかせ

作家としての小酒井博士

平林 初之輔

「新青年 第一〇巻第七号」1929(昭和4)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,190 字 · 5 页

青空文庫

であるだろう。じっさい博士は探偵小説を非常に愛好して、ある時期には西洋の作品を片っ端から読まれたことを告白しておられるが、そのうちに古今東西の探偵小説に関する研究を次々に発表し、ドゥーゼやチェスタトンなどの名作を翻訳され(中でもドゥーゼは、博士によりて真っ先に日本に紹介されたのであった)、とうとう、創作にまで手を染められて、たちまち日本の探偵小説界の寵児となり権威となられたのであるが、博士の全体から見ると、探偵小説のごときは余技という感じが多分にする。それは博士の探偵小説が、大したものでなかったためではなくて、博士の全体が偉大であったために、日本で一流の探偵小説家としての博士も、その全体から見ると小さく見えたためであろう。

探偵小説の作家には日本だけでなく外国でも文壇と無関係な畠ちがいの人が多い。『灰色の部屋』の作者イーデン・フィルポッツや『赤色館の秘密』の作者A・A・ミルンや『百万長者の死』の作者G・D・H・コールなど枚挙にいとまがない。これは探偵小説には、文章とか、表現とかいう形式方面の才能よりも、構想、推理といった内容方面の才能がより多く必要とされるからであろう。