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かじつ

佳日

太宰 治

「改造 第二十六巻第一号」改造社、1944(昭和19)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,912 字 · 30 页

青空文庫

よいお天気だった。大隅君は青空を見上げて、

「しかし、東京は、のんきだな。」

「そうかね。」

「のんきだ。北京は、こんなもんじゃないぜ。」私は東京の人全部を代表して叱られている形だった。けれども、旅行者にとってはのんきそうに見えながらも、帝都の人たちはすべて懸命の努力で生きているのだという事を、この北京の客に説明してやろうかしらと、ふと思った。

「緊張の足りないところもあるだろうねえ。」私は思っている事と反対の事を言ってしまった。私は議論を好まないたちの男である。

「ある。」大隅君は昂然と言った。

銭湯から帰って、早めの夕食をたべた。お酒も出た。

「酒だってあるし、」大隅君は、酒を飲みながら、叱るような口調で私に言うのである。「お料理だって、こんなにたくさん出来るじゃないか。君たちはめぐまれ過ぎているんだ。」

大隅君が北京から、やって来るというので、家の者が、四、五日前から、野菜やさかなを少しずつ買い集め貯蔵して置いたのだ。交番へ行って応急米の手続きもして置いたのだ。お酒は、その朝、世田谷の姉のところへ行って配給の酒をゆずってもらって来たのだ。けれども、そんな実情を打明けたら、客は居心地の悪い思いをする。