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かじつ

佳日

太宰 治

「改造 第二十六巻第一号」改造社、1944(昭和19)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,912 字 · 30 页

青空文庫

そうでもなくっちゃあ、――」言うことが大きい。「何しろ名誉の家だからな。」

「名誉の家?」

「長女の婿は三、四年前に北支で戦死、家族はいま小坂の家に住んでいる筈だ。次女の婿は、これは小坂の養子らしいが、早くから出征していまは南方に活躍中とか聞いていたが、君は知らなかったのかい?」

「そうかあ。」私は恥ずかしかった。すすめられるままに、ただ阿呆のように、しっかりビイルを飲んで、そうして長押の写真を見て、無礼極まる質問を発して、そうして意気揚々と引上げて来た私の日本一の間抜けた姿を思い、頬が赤くなり、耳が赤くなり、胃腑まで赤くなるような気持であった。

「一ばん大事のことじゃないか。どうしてそれを知らせてくれなかったんだ。僕は大恥をかいたよ。」

「どうだって、いいさ。」

「よかないよ。大事なことだ。」あからさまに憤怒の口調になっていた。喧嘩になってもいいと思った。「山田君も山田君だ。そんな大事なことを一言も僕に教えてくれなかったというのは不親切だ。僕は、こんどの世話はごめんこうむる。僕はもう小坂さんの家へは顔出しできない。君がきょう行くんだったら、ひとりで行けよ。