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ぞくしゅう
俗臭
織田 作之助
「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页
と定評があるのだ。高慢たれの所以を今も発揮しないでおかれようか。
「私はリストのハンガリアンラプソデイ掛けようと思ってんのよ。浪花節なんか下品やわ」
大阪弁と東京弁。
「さあ、掛けて来ようっと」信子が立上ったのを機会に、姉妹はぞろ/\と部屋を出て行った。政江は千満子の帯を直してやった。
「何んや、高慢たれやがって! あんなピアノなんか何良えんなら! ピン/\、ポロン/\大体政江! おん者があんなもん習わせるのがいかへんのや!」
政江を除き、人々は総て同感であった。政江は一寸ふくれた。人々は酒の味がよくなったと思うのだった。市治郎夫婦、伝三郎夫婦、三亀雄、もと雇人であった春松が一座していたが、就中春松は一番酒がうまいと思った。彼は政江に押しつけられて、児子家の女中を嫁にしたが、その嫁が何かにつけて政江の指図をうけて威張り散らすので、亭主の威光が少しもないという理由で、政江を恨んでいるのだった。外にも恨む理由はある。が目下は専らそれだ。その嫁が今臨月で今日は来ていないということも酒の味に関係がある。三亀雄の妻は先刻一寸顔を出したゞけで、乳飲児があるというのを口実にさっさと引き上げていた。