轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ぞくしゅう

俗臭

織田 作之助

「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页

青空文庫

権右衛門は上機嫌と思われる声で、「新世界の十銭屋へ行って来ちゃんよ。十銭屋が一番良えわ」

十銭屋とは、入場料十銭の漫才小屋のことである。正月の物日で満員の客に押されて漫才をきゝながら時間を費していたとは、如何にもうなずける事だが、彼の機嫌の良さは些か意外だった。所詮、人々には計り知れぬ権右衛門の心中だ。彼は、幕合いにラムネをのもうと思い、人ごみの中で背のびをして売子を呼んだ。が、売子は仲々やって来なかった。「御免やっしゃ」と人ごみをかきわけて、売子の方に行こうとした途端に誰かの足を踏みつけた。「こら! 気ィつけ! 不注意者!」「えらい済んまへん」「済まんで済む思てけつかんのか!」「へえ」権右衛門は五度も六度も頭を下げねばならなかった。相手は、職人風の男で、その暮し振りを察するに、その日暮し以上を出ないと見えた。頭を下げながら、権右衛門の頭に、百万円が想い浮ぶ様では、彼は只の人間だといわれても仕方がない。大袈裟にいって、彼はその時、百万円を捨てる覚悟をした。以下はその時の決心を披瀝した言葉である。

――「皆聞いてくれ。わしは百万円を無いもんと思うた。