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ほくろてんのう
保久呂天皇
「群像 第九巻第七号」1954(昭和29)年6月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,034 字 · 27 页
しかし益々金がいるからこれが重大な動機である。そして日とともに忘れることができなくなるのは、盗難の数日前に彼をからかって怒らせたことである。久作は怒って天の岩戸へ駈けこむように石室へもぐったが、意外にもジッとこらえて坐禅をくんでいた。これが重大である。金持が辛抱づよくなるのは中平自身の心境にてらしてもよく分るが、貧乏人が辛抱づよいというのはすでに不穏のシルシである。赤穂四十七士のように不穏のタクラミがある時にかぎって貧乏人がジッと我慢するものだ。久作は堀部安兵衛よりも怒りッぽいガサツ者で生れた時から一生怒り通してきたような奴であるのに、あの時にかぎってジッとこらえたのがフシギ千万ではないか。水爆を無事まぬかれて生き残っても奴のようにスカンピンでは生き残ったカイがないから、奴が山の製造に着手した時には同時にシマの財布を盗む計画であったに相違なく、そのタクラミは大石内蔵之助のように深かかったのである。してみるとあの石室の中に誰にも分らない秘密の隠し場があるに相違ない。奴は生来奇妙な工夫に富んでいる。あるいはシマの財布を盗んで隠すために五年もかけてあの山をこしらえたのかも知れないのだ。