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しゅぜんじものがたり

修禅寺物語

岡本 綺堂

「文芸倶楽部」1911(明治44)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,737 字 · 26 页

青空文庫

かえで では、姉様の安否も知れませぬか。

春彦 姉はさておいて、上様の御安否さえもまだわからぬ。小勢ながらも近習の衆が、火花をちらして追っつ返しつ、今が合戦最中じゃ。

夜叉王 なにを言うにも多勢に無勢、御所方とても鬼神ではあるまいに、勝負は大方知れてある。とても逃れぬ御運の末じゃ。蒲殿といい、上様と言い、いかなる因縁かこの修禅寺には、土の底まで源氏の血が沁みるのう。

(寺鐘烈しくきこゆ。春彦夫婦は再び表をうかがい見る。)

かえで おお、おびただしい人の足音……。鎬を削る太刀の音……。

春彦 ここへも次第に近づいてくるわ。

(桂は頼家の仮面を持ちて顔には髪をふりかけ、直垂を着て長巻を持ち、手負いの体にて走り出で、門口に来たりて倒る。)

春彦 や、誰やら表に……。

(夫婦は走り寄りて扶け起し、庭さきに伴い入るれば、桂はまた倒れる。)

春彦 これ、傷は浅うござりまするぞ。心を確かに持たせられい。

かつら (息もたゆげに)おお妹……。春彦どの……。父様はどこにじゃ。

夜叉王 や、なんと……。

(夜叉王は怪しみて立ちよる。桂は顔をあげる。みなみな驚く。)

春彦 や、侍衆とおもいのほか……。