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はいくのつくりよう
俳句の作りよう
高浜 虚子
「ホトトギス」1913(大正2)年11月~
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,854 字 · 91 页
その赤っちゃけた泥はポカポカと柔らかく、ものがちょっとでも触れればたちまち浮き上がりそうにみえていました。私は試みにひとつの小石を拾って投げ込んでみました。果たしてその泥は煙のように軽くその小石を中心にして浮き上がるのでありました。「春は地皮の下一分のところまで押し上げて来ているのだ」そんなふうに私は考えました。こういう時にいつでも思い出される「水温む」という季題のことを私はまた考えずにはいられませんでした。水温む! それは空気が暖かになるために温むのだと考えるよりも、大地の下から押し上げてくる春の力によって温むのだと考える方が自然なように思われるのでありました。科学者ならばこんな不条理なことは考えないでありましょう。しかし文学者はこのような非科学的な考えをめぐらすことの上に何人にも求められない特権を持っています。
その時でありました、私がふとある大きな事実に逢着しましたのは。
その事実というのはほかでもありませんでした。そこにゴミとも何ともつかぬ、混雑した中にどこか秩序のある、赤っちゃけた泥とちょっと見さかいのつかぬような色をした、やはり、一種の藻草――それはもうこの間の冬の寒さに無用の廃物となってもとの泥にもどろうとしているような藻草――があるあたりに、銭ほどの大きさの青い一つの葉が夢のように浮い