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びぜんてんいちぼう
備前天一坊
江見 水蔭
「現代大衆文学全集」平凡社、1928(昭和3)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,511 字 · 25 页
近々御隠居ともならば、私田を御次男御三男にも御分譲。政言殿には二万五千石。輝録殿には一万五千石と、内々御決定の折柄に、又そこへ御一人は、算盤の弾き直しだ。
しかし、それはどうにでもなる事で、親は親。子は子。金三郎とやら申す浪人と、正しく御親子関係に相違無い上は、晴れての御対面は如何としても、早速御召抱ありてしかるべきものだけれど、さてこうした事というものは直ぐに分る。御領内一般は申すに及ばず、日本国中に知れ渡って、どうだ、明君とも云われる新太郎少将も矢張女は可愛かったのだ。侍女に御手が付いて御落胤まである仲だ。人間とかく四角張ってばかりはいられぬものだと、忽ち風紀が弛んで来るは必定。御上の御配慮はそこにあるので、この出羽に何とか分別無いかと、それ故の御密使であろう。こいつはちょっと難問題だと、腕を拱いたまま考え込んだ。
「や、御苦労御苦労。しからばそれに就てこちらにも考えが御座る。御身早速、半田屋九兵衛を呼出し、内密に申し聞かされえ」
「はッ」
「右の次第は」
これこれと出羽は声を更に一段と潜めて、源之丞の耳近くに密告いた。
「はッ、心得て御座りまする」