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ぼくがかわいがるから

僕がかわいがるから

小川 未明

「台湾日日新報」1936(昭和11)年5月22日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,056 字 · 5 页

青空文庫

「え、伝書ばとを飼ってくれるの?」と、正ちゃんは、目をかがやかしました。

「ええ、鳥屋へいって、買ってきてあげますよ。」

「二輪車とミットと伝書ばとを買ってくれない?」と、正ちゃんは、大いに欲張りました。

「さあ、お父さんが、なんとおっしゃるかしれませんけれど、そうしたら、正ちゃんは、クロを捨ててしまいますね?」と、お母さんは、念を押されました。

「どうしても、クロを捨ててしまうの、かわいそうだなあ。だれかにやってしまえばいいではないか。」と、正ちゃんは、考えていました。

「それは、聞いてみますが、あんなに大きくなった犬をだれも、もらうものはないでしょう。遠くへつれていって、置いてくるのですね。」

このとき、正ちゃんは、クロと約束したことを思い出しました。僕は、おまえをかわいがってやるからといったことを思い出しました。

「僕、いやだ、やはり、クロを飼っておく。」と、きっぱりといいました。

「伝書ばとはいらないんですね。」と、お母さんが、おっしゃいました。

伝書ばとときくと、正ちゃんは、また迷ってしまいました。犬もいいが、あのかわいらしい目をしたはともほしかったのです。