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そう
僧
小川 未明
「新小説」1910(明治43)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,206 字 · 21 页
僧侶は二三日この村を托鉢して歩いたが何時しか何処にか去った。老夫婦は、暗い森の方を見るたびに、近いうちに柩があの森の中から出るだろうと語り合った。独り留守をしている女房は、遠く、海の鳴音の聞える北の方に思いをやって、夫の身の上を案じていた。土の色は白く乾いて、木の葉は大抵落ちた。圃に残った桑の葉は、黒く凋んだ。天地は終日音もなく、死んだように静かであった。
「雪が、間近に来る。」
と爺は戸口に出て、物を取り片づけながら言った。
空にはただ白い、眤として動かない雲が張り詰めていた。森も、家も、圃も、頭から経帷子を被ったように黙って、陰気であった。
この総べて音の死んだような極めて静かな日に老夫婦に知らせが来た。
町の時計屋に奉公している息子が急病に死んだ――と。