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ひかりのなかに
光の中に
金 史良
「文芸首都」1939(昭和14)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,411 字 · 49 页
やはりいつものように弱い者をいじめ、新入者の弁当は取り上げた。だが私はその晩以来ますます彼のことを不審におもうようになった。それでも彼が警察の中で山田と呼ばれているからには、内地人であるに違いなかった。それでは彼の母が朝鮮人であるかも知れないと考えたが、ついぞ確かめることが出来ずに私は起訴猶予となって出て来たのである。――
そして私は今ようやく彼のことを思い出したのだった。私は何という迂闊さであろう。苗字の符合からしてもそれ位はとうに感附いていそうなものではないか。最初に山田春雄を見た瞬間から、私の眼の前には半兵衛の映像がかすかながらの光芒をもってちらついていた筈だった。だが私はそれが半兵衛であることに気附くことが出来なかった。或は春雄に対する愛情からして、ひそかにそれが半兵衛であることを私は怖れていたのかも知れない。
「半兵衛」私はもう一度静かに呟いた。
だが春雄はすやすやと心よい眠りにおちている。私の網膜には、
「おらあの女房も朝鮮の女だぜ」と云っていた半兵衛の卑屈な笑い顔が幾重にも浮び上って来た。するとそれがいつの間にか今度は春雄の寝姿の上にのりうつってしまった。