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ひかりのなかに

光の中に

金 史良

「文芸首都」1939(昭和14)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,411 字 · 49 页

青空文庫

うまくなったらもっと偉い先生の所へ連れて行こうな」私は何も作りごとを並べているのではなかった。私も一時は舞踊家になろうと思って創作舞踊を試みた覚えさえあった。

「うん」彼の目は青い星のように輝いていた。

(そうだ、近い中に協会の傍のアパートにでも移って行こう。そこで一先ず二人きりになるんだ)と私は自分に云い聞かせるのだった。彼がどうこれから豹変するかは知らない。寧ろ又私を立ち所に裏切るには違いない。だが頑なにこちこちといじけ固っていた気持を、ほんの少しでもほぐしかけて来たこの機会を、私は逃してはならないと思ったのだ。

どうしたものかその時二人は浮かれ浮かれて老木の間をぬけて弁天様の傍を通っていた。そこにもここにも昨夜の嵐の跡が残って、折れた枝が落ちかかったり雨に洗われた地面に所々わくら葉が落ちたりしていた。鳩の群が弁天様の屋根や五重の塔のまわりをにぎやかに飛び交っていた。灯籠の傍に出ると下の方に茂みの合間を通して不忍池が見渡される。それは鏡をのべたように夕陽に照り返り時々ぎらぎらと金色に光ってみえた。五つ六つボートが浮んでいた。池に渡した石橋のてすりには多勢の人々がもたれて水面をながめている。