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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

「本当はね……ほんとうは岸和の鶴子さん」

私は自分の顔が蒼くなるのを感じた。

「ふうーむ」

と姉は何か感じたらしかったが、「あんたは鶴子さんとはあまり遊んだことないでしょう」

「ええ。殆んどありません。逢うことはあっても」

「あれはおとなしい子だ。病身だからね」

種子姉としては、いつもなら、もっと乗り出して、逢えるようにとり計ってやろうとか、何とか言ってくれる筈なのだが、どういう訳かそうは言わなかった。そして私からもその後も姉に謎をかけたりする気になれなかったのは、どうもこの少女と私との運命が非現実的なものなのだと思わずにいられなかったからだろう。

しかし私は鶴子とまるで逢わなかったのではない。幾度かの思い出はあり、彼女の胸にも、私のおもかげが残っていることは確かである。

千光寺が若葉で美しいころであった。私は長い石段を登って、やわらかい楓に半ば葉がくれたとある円亭で休んでいた。と長屋(街の名)の方からの参道を支那服を着た召使をつれて、登って来たのは鶴子であった。私はハッとした。鶴子も私に気付いて会釈したが、その支那人の召使は気がつかないらしく、同じ円亭にはいって来て、腰かけさせた。