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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

私はこの祖母にわがままの仕放題した。

「お祖母さん、僕の痒いところ解らないの?」

これが私が言って、むつがったという有名な言葉だ。

私はそれを思うたびに、私がつつまれて居た恩愛の温かさを思って拝跪したくなる。人の愛と心遣いの行き届くことを俗に「痒い所に手が届く」という。お祖母さんの手は当然痒いところに届くものと思い込み、だだをこねた幼い自分。それを、又当り前に受けて叱りもせず、

「ここかい? ここかい?」

と言って掻いてくれた祖母。後年私は世間の批評家から無理な悪口を言われ、言い訳けしても聞かれない理不尽に遇った時、この事を思い出して心中で泣いた事がある。これは実に対蹠的な世界だ。そうした愛の至妙境を味わっていたから余計苦しかったのだろう。もっと荒く育てられていたら耐えよかったろう。こうした育て方は確かに自分を弱くした。しかし私はもとより悔いる気はない。こうした愛の至妙境を知っていればこそ、人と人とのつながりの理想の浄土を構図するときに、仏とその子との融け合いを理念するときに、深い深いインテンシチィを私は持つことが出来るのだ。マルクス主義の物的平等社会位では人間の理想共同体として満足出来なくなるのだ。