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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

鈴子の方でも私を文学への愛と、美への感覚のある少年として牽き付けられていたらしかった。私たちは逢うのが楽しかった。会の時は子供同士として並んで机に向かっていたし、宮の、後の林を歩く折りには花を一つ摘みとっても、歌を競う心が二人にあった。が私は彼女が草や花の名をよく知ってるのにはおどろいた。これはわれもこう、これはゆきのした、これはのりうつぎと言った風に。そして蔓草の莢がらだとか、松の花粉だとか、たんぽぽの種だとかこまかいものを直ぐに見付ける名人だった。中にも蝉のぬけがらは彼女に非常に歌心をそそるらしかった。「うつせみの」「うつせみの」と口ずさみながら彼女は林の中を歩いた。

「あなたは閨秀歌人になるがいいな」と私は或る時言った。

「なれたらなりたいわ」と彼女は気がなくもないらしかった。

「緋の袴を穿いて歌をよんだらすっかり百人一首の絵のようだ」

と私はからかった。が彼女はどうしたものか憂鬱になってしまった。「気にさわったの?」

「そうじゃないけど、何か知ら悲しい気がするわ。私の境遇が――」

「どうしてだろう。僕は緋の袴を穿いたあなたが一等好きだと言ってるのに――」