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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

「うむ。尊いね。平民にはわからない犠牲と奉仕だね」

「あたしその話を聞いてから、巫女になることをはずかしがったり、淋しがったりするのはすまないと思いだしたわ」

「うむ。それはそうだね」

鈴子は自分の身につまされたのであろう。ひとつには鈴子の家の家運が日に傾きつつあるということは色々なことに反映していた。それに妹もない彼女は、社になくてならぬ巫女の勤めを当分止められそうもない運命を感じたのであろう。

真間の手児奈、桜児の伝説などがいつも二人の間の話題だったのは言う迄もない。

古井の傍に名もない墓などあると、

真間の手児奈の奥津城どころ

と彼女は口吟んだものだ。又森の下草に散りしいている花を見て、

桜の花は散りにけるかも

桜と私がやると、彼女は直ぐに

春さらばかざしにせむと吾が思いし

と桜児の歌をつけるのであった。

彼女の追憶は私にはどうしても巫女として浮んで来るのである。

そうした追憶の一番濃いのは住吉神社の夏祭りの夜の神楽の折のことだ。

尾道は夏祭りの多い港であるが、住吉明神の祭礼は「お旅」と言って、街はずれの「御所」という海べの草っぱのあき地に神輿が移って、一夜を仮泊されるのであった。