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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
私は息を凝らした。
「鈴子さん今夜はきれいだわね」
と姉が言った。
「何か油が乗っていますね」
私はそう言いつつ、彼女の手足の動きを追っていた。
彼女は見物の歓呼の裡に退場した。
段々と多勢出て、舞いも対話が伴いだした。その対話の中には地方の伝説があり、方言が使われていた。舞台と見物とが融け合って来た。
剣舞も演じられた。三方荒神も舞われた。
「三方荒神、中のが大将」
と子供たちは見物席からはやした。そうする慣わしなのだ。
しかしこうなると場内はざわつき出し、つきものの押し合いが初まり出した。それをやりに来る若い衆や沖仲仕などもあるのだ。
「国堅め」と言って東、西、南、北、中央の五人を象る五人が五色の幣を持って舞う頃になると、めきめきと垣が折れる音などして、いよいよ神楽場の場景になったので、姉は恐れて帰ると言い出した。
「僕はもっと見たいなあ」
「じゃあんた見てお帰り。あたしだけ帰るわ」
車に乗る姉を見送ると、私は又引き返して見物の中にもぐり込んだ。
もう自由だ。押し合いでも、へし合いでもやってやれ。
実際私は神楽場の空気をおもしろいと思った。民族的な、土俗的な力強い何ものかがあった。