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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

私は父を柔和な人間だと思って、心中尊敬の念を感じた。

が幼ないころの私の心に、父が悪い印象を与えた事がひとつある。

それは私を学校の先生に訴えたことだ。小学校の三年の初め、私が家であまりわがままで、膳を引っくり返したり、箪笥の引き手をカタカタやったり、倉へ入れられても平気で砂糖をなめたり、小便をしたり、廊下の柱にくくりつけられると足で庭木を折ったりするので、母と相談して学校の先生に訴えた。

放課後私は残されて職員室に呼ばれた。羽場という校長さんが、

「あなたは学校ではおとなしいが、家では言うことを聞かないそうだな」

私は胸を衝かれた。私は組長を止めさせられ、品行が乙になった。私はそれから家でやんちゃをしなくはなったが、たしかに父母を恨んだ。刑罰というものはどうしても精神的なものではない。良心に反省を与えるものではない。恐怖と恨みとを与えるものだ。私はそれから四年に再び組長に任ぜられ、品行が甲になる迄幼な心にどれだけ苦心したか知れない。果して名誉をとり返せるだろうかという心配、先生への不面目、裏を知られたという羞恥、キズ物になったような心持ち、九つや十の子供の心にハッキリと暗い、そしていくらか世俗的な恢復慾を起こさせたことは、どうしても父としては首尾一貫していない気がする。