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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
しかも何か甘美な、訴えるものを持っている一種の誘惑者としての存在であった。
彼は私に興味を感じたらしかった。会の講演部委員であった私は彼に指命して演説させようとした事もあったが、彼ははにかんで一度も演壇に立たなかった。がそのはにかみ方も処女の嬌羞を連想させるようなところがあった。
廊下で出逢ったりする時彼は明らかに私にウインクした。私は彼を明らさまに愛するには何か知ら清浄でないものを感じて近づくことが出来なかった。そのくせ私は彼に引きつけられないわけに行かなかった。
この少年は帽子の好みにも、衿のつけ方にも洗練と技巧とを持っていた。ルノアルの描く少年のようなアンゲネームな香気がまわりにふりまかれた。
私はこの少年に引きつけられるのが、しかし、何か自尊心を傷けた。学業が優れてもいねば、スポーツに技倆があるでもない少年をただ感覚的に好むのは不愉快であった。しかしそう思いつつも彼を見ると私の目は娯しんだ。
私が校庭で器械体操をしている時彼はじっと立って私を見たりしていた。
私は彼の目付きの中に私への憧憬とそしてこうした少年の本能としての、誘惑とを見出した。