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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
しかし私は中学の三、四年頃からは文学的よりも、むしろ政治的な動き方をしていた。外交官になろうというようなアムビションを抱いてた事もあった。三之助君はそれを知っていたが、その奥にある素質を洞察していたのであった。それで彼は私からこのアムビションを取り去って、純一に思索に堪え得るようにさせようとして骨折り、忍耐深く見守ってくれたのであった。この頃から私と三之助君との実に美しい、尊い青春の友情が初まったのであった。
またその頃私がアムビションを離れて、人生について深く思うような傾向になる一つの出来事があった。それは小泉時子という二つ年上の娘とのローマンスであった。
それは今から思えばまことに淡いローマンスであったが、しかもそれは私の一生の運命のコースをまるで変えたかも知れないような危機的なものであった。
時子の家は十日市にある旧家で、長者らしい寛裕と気品とのある美しい家庭であった。時子の父は日蓮教徒で信心深く、母はまれに見る善良な人であった。姉妹二人あって、妹娘が時子であった。二人とも美しかった。姉娘はおっとりとして、妹娘は利発であった。姉娘には婿養子があり、その人は遊び半分に私の中学の先生をしていた。