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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
私たちは幾人もの友だちと彼女の家を訪ねては御馳走になった。母も姉も天の使のように善良であった。
庄原の私の家に中学の友達が泊りがけで遊びに来て、
「君の家は遊ぶのに実に都合のいい家だ」
とよく言った。父母が善良で、美しい姉妹がいて、室内遊戯の材料が豊富で、そして生活がゆとりがあったからだ。
時子の家がその通りであった。
多勢の友だちで行ったが、私は時子の心が私に寄っていることを知っていた。
が私たちは最後までキスもしなかった。遊戯の時に、それにまぎれて、手を握り合ったのが表現の絶頂であった。
ただ手紙のやりとりをするだけ、それも互いにつつましく、淡いものであった。
が卒業の日が近づくにつれ、互に心忙がれる何ものかがあった。
一方では父は私の東京への進学をなかなか許してくれなかった。それは父にとっては、倉田家の運命の岐れ目になる重大事であり、自分が養子であって、家をつぶしてはならぬという責任感から来ているのであった。
私はも少しで遊学の志をあきらめてしまわねばなるまいかと思う所であった。(恐しいことではないか!)
そしてそれをあきらめるためには時子にすがりたかった。