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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

その当時は気が付かなかったが、客観的には、普通の心理ではない。

普通人が恥じる所を恥じず、恥じない所を恥じてる節々が実に多かったことを感じる。

中学時代の思い出は尽きない。

色々と書きつづけていれば限りもなく追憶が湧きあがって来る。しかしいつまでもこのあたりに低徊しているわけにも行くまい。というのは今やようやく生の自覚が目ざめたので、私の真面目な一人前の生活求道者としての自叙伝はこれから初まると言っていいのだからだ。

それではなつかしい三次時代はこれで葬ろう。それと共に私の少年期の幕を下ろそう。

三つの川の巴を描くところ、狭霧立ちこむるあの北備の別天地。そこではぐみ育てた五年間の、思想上の揺籃期の生活の体験は私の一生涯の人間的の性格を決定したと言ってもいいのだ。私は涙に近い感謝と、忘れじの愛慕とを永久に寄せるのであろう。

比叡尾山よ、馬洗川よ。恩師よ、友だちよ、初恋の人よ。白帆会よ。

私は三次時代の思い出を書きつづった事をせめて私の感謝と郷愁との記念として君たちにささげたいのだ。それを受けてくれ。生涯の内に色々の作の中に君たちの事を織り込まれるであろう。