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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
十銭か、二十銭かの本を買い代えてくれなかったのは確かに教訓的意味があったに違いない。事実一生を通じて、物質を粗末に、無造作に取り扱うことは私の大きな弱点となった。今日私が貧乏するのもそのせいである。父には、慈父の直感で、私のその生来の弱点が見抜けて、それを心配していたのではあるまいか。しかもその弱点は中々矯らなかった。中学の時生徒監の鈴木蘭二先生という軍人出の体操教師で有名な節倹力行家がおられたが、私がいつでもゲートルをほうり出して置くので持って帰られる。とりに来いその時教訓してやる、という意味なのだが、私は新しいのを買ってはく、又ほうり出して置くので持ってゆかれる。又別のをはく。さすがの先生も困った奴だと思われたそうだ。しかし私はこの先生の軍事的教練には熱心忠実に従った。評点は甲だったが、どうしても肌が合わなかった。一般に謹倹力行を尊敬しながら、何故かそれが身につかぬ。この文人的、水性的素質が子供のころから私はあらわれており、父のひそかな憂いであったのではあるまいか。倉田家の婿養子となって、家産をつぶさぬようにという事は父の一生の義務感であった。