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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

それは愛と誠と誓いとを以て貫ぬかれているとは言え、日常生活の平板から、夢と飛翅とへ駈り立てるものであった。私たちの美的、文人的そして多少とも水性的な傾向はこの刺戟が作用していることはいなまれない。私たちは幼少のころ現実的な労苦と渋みに対し、鍛錬されることがあまりに足りなかった。浄瑠璃と共に報徳教的なものを教えられたらどうだったろう。二宮金次郎的の空気は私たちにはなかった。精励はあっても書を読む方のみで、わらじをつくる方はなかった。わらじを作ることを軽蔑せずに、尊みほめる、美的感情教育においては間然するところはなかった。それは至れり尽せりであった。しかし自らわらじをつくることは無かった。まして現実の汚れた、いざこざすなわち塵労については、父はこれを身に引き受けて、私たちには触れさせなかった。かようにして悪気の少しもない、玉のような子供たちをつくりあげ、つらねた玉のようにならべて、これをめで愛するのが父の幸福であった。

がこれは果して慈父の愛に欠けていなかったであろうか?

世間の嵐の中に、塵労のはきだめのような現実社会へ、かようにして無抵抗のままで、押しやられた子供たちはどうなるであろう?