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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
「あのお仲さんが?」と思うと堪えられない気がした。
芳正君の一家もまた没落の運命を辿った。中学には私より二年も遅れて入ったが、同じ状態で仲間から侮られ、成績はますます悪く、とうとう中学退学してしまった。父親は頑迷のため職をくび切られ、この一家もまた庄原の町から立ち退かねばならなくなってしまった。
婦徳のかぎりを尽したあの母夫人がどうして不幸に沈まなくてはならないのだろう。芳正君も憎むべき落度は少しもない。人は好かったし、怠け者ではなかった。父からの何か不幸な血の運命があった。夫人は女大学風に育てられ、媒介によって、家から家に嫁して来て、妻となり、母となってその婦徳と才能のかぎりを尽したのであった。
もっと然るべき人に嫁していたらとは第三者が誰れしも思うところだ。しかしそうした結婚がなされた上は、夫人の零落と生れた芳正君の運命は殆んど避け難いものであった。すなわち夫人は第二必然とも言うべき社会の制度により、芳正君はもっと直接な遺伝の必然によって、不幸な生涯を持たねばならなかったのだ。
生れる子供にとって親の結婚は恐るべきものである。が親たちにとっても、その結婚を司る運命は同様に恐るべきものだ。